サラリーマン農家のblog

農業法人に勤める人のブログです

果たして大規模農業が優れているのか?

こんにちは。

まー君です。

先日、大規模農業VS小規模農業はどちらが優れているのか?

という記事を読みました。

https://treeandnorf.com/which-is-good-large-agri-or-small-one/

この方は小規模農家を悪く言うとかではなく、今の日本には本当の大規模農業を行っているところはほとんどない。

大規模農業を行うことで農業界の地位向上を図りたいというのが書かれている意図なのだと思います。

私も農業法人に勤めるサラリーマンとして、大規模農業が発展することで過疎化の進む地方を大規模農業が担っていく必要があると考えますので、考え方として共感できる部分は大いにあります。

 

しかしながら、現状大規模農業が増えていかないのにも理由があると思い、今回、久しぶりにブログ書いてみました。

正直それほど見ている方もいないブログですが、自分の頭の中を整理し、不特定多数の人にも伝える為に書くということは私自身の勉強になっており、見てくださる方に多少の貢献にもなればと思い、書かせていただきます。

 

日本に大規模農業が発展していかない理由としては

  1. 農家が多い(需要が多い)
  2. 食糧に困っていない(供給が少ない)
  3. 農業がそれほど儲からない

この3点があげられると考えます。

1についてですが、現在農家は216万戸ほどあるそうです。その内販売農家(30a以上、販売金額50万円以上)が113万戸。専業でやっているのは37万戸。

https://www.maff.go.jp/j/tokei/sihyo/index.html

です。小さい農家、農業を副業としてやっている農家が多いというのが日本(アジア?)の農業の特徴と思われます。戦後の農地解放という政策。化学肥料、農薬、機械化など農業の技術開発が進む前は労働集約的(人海戦術で作業を進める)な業界であり、家族経営で管理できる面積しかやれなかったため、それほど大きくなかったことが理由なのかと考えます。

2についてですが、農業の機械化などによる生産性の向上。人口の減少。輸入農産物の増加などにより、日本の食糧が不足している状況ではありません。

3ですが、1と2の関係(需要が多く、供給が少ない)から、農産物は買い手(消費者、小売店など)が強い状態です。価格決定権を相手に握られており、そのため、農産物は安くなっています。

農産物の価格は相場というなんとなくの風潮で価格が決められています。

分かりやすい資料が見つからなかったのですが、米価は玄米1俵当りでいうと1993年の23,6071円をピークに今は15,000円前後となっています。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B1%B3%E4%BE%A1%E3%81%AE%E5%A4%89%E9%81%B7

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/181128/attach/pdf/re_data_3-2.pdf

一方経費は農水省の統計によると60kg当り15,000円程度となるようです。

file:///C:/Users/Owner/Downloads/e007-28-b.pdf

そう、つまり、水稲は収支トントン程度にしかならないです。

ただ、お米は補助金が出るためそれで利益が出るというのがお米の構造と言えます。

また、ここにある労働費と労働時間を割ると時給が1,435円となります。

他の職業の時給が以下のリンクにありますが、低い時給に分類されることになるのが分かります。

http://rank.in.coocan.jp/jikyuu/005.html

そのため、お米農家としては

・お米自体の労働時間は主に田植えと稲刈りの時期だけなので、野菜の栽培など行うことで収入を増やす

・規模拡大することで補助金をもらう額を増やし、それで機械化を進め、さらに大規模化を進める

・基本的に家族労働で作業を行い、雇用する経費を極力減らす

というやり方を行っている方が多いように思います。

農業の大きな特徴として農産物の収穫時期は人でが必要ですが、他の時期はさほど必要でないものが多い為、通年で仕事がない。通年で収入がないという状況になるケースが多いです。そのため、通年雇用する大規模農業法人というものがなかなかできないのではないかと考えます。

野菜についても同様で時給に換算すると1000円~2000円程度になっています。

https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00500201&tstat=000001013460&cycle=7&year=20070&month=0&tclass1=000001013649&tclass2=000001020117&tclass3=000001034993

大規模農業法人となり正社員を雇用すれば給与はもちろんですが、社会保険などの費用、賞与などの報酬も必要となります。人を雇用するコストを農産物の生産だけで吸収し、なおかつ法人として利益をだすのは非常に難しいのではないか。規模を大きくすれば大きくするだけコストが増え、かえって難しくなるのではないか。と私は感じています。

逆に工場と同じようにコストを割り返して農産物の単価にするとすれば相場よりも高くなってしまい、売り先が見つからないということになってしまうのだと思います。

以上のように考えると、単に農産物を作って稼ぐだけであるならば大規模でやる必要性というのは少ないのではないかというのが私の考えです。

むしろ差別化して高付加価値な農産物を目指し、ECなどでファンを増やして稼いでいくというやりかたは小規模な方が向いていると思います。

では、大規模農業をやるためにどうしたらいいのかということも考えたいと思います。

私が考えるに、地域のインフラとなり地域の農業にとって必要な存在になることで農業生産+αの収入元を作っていく必要があるのではないかと思います。

加工、物流、小売などを行う6次産業化なんかはその典型なのかと思います。自分たちでも生産し、地域の方にも生産してもらう。できた農産物を加工したり、青果で流通させていく。機械化を進め、地域の方の作業を請け負う。資材を大量に安く仕入れ、それを農家の方にも普通に買うよりは安く販売する。農業のノウハウを教え、生産者を増やすということかなあと考えています。まあ、考えてみれば大概農協がやっていることをやっていくということなのかと思います。

大規模農業を実現させるには非常に高いハードルなのですが、実際実現させている方もいらっしゃいます。この壮大なロマンともいえることに興味を持ち、やってみたいと思える方が今後も増え、過疎化の進む地域を担っていくことで日本の農業もまだまだ頑張っていけるのではないかと思います。

大規模農業、小規模農業というのは飲食店に例えると分かりやすいと思います。端的に言うと大規模農業は店舗数の多いチェーン店。小規模農業というのは特徴のある個人店ということになるのかと思います。そう考えるとどちらも世の中に必要な存在なのだと思います。